I-Vカーブ特性とは?
太陽光発電システムの動作確認は、系統(ストリング)の開放電圧(電流が流れていない状態)を測定しますが、実際と同様に電流を流さないと正確な性能チェックはできません。そこで開発されたのが、ストリングトレーサーです。モジュールを動作状態にして、電流値と電圧値の変化を測定し、専用ソフトで解析して作成するのがI-Vカーブ特性です。系統のモジュールの発電性能がカーブで表示されるので正確に確認出来ます。下図のとおり、緑色のカーブの様に階段状になれば不具合がある事が直ぐにわかります。不具合が有る系統でも開放電圧は同じ電圧値です。したがって開放電圧測定だけでは不具合のある系統を発見するのは不可能です。発電不良をチェックするのは「I-Vカーブ特性測定」が唯一の方法です。

上図の通り、正常な赤色に比べ緑色のカーブは明らかに異常がある事がすぐに分かります。この原因は影やセルの不良(ホットスポット)などです。結果的に緑色のカーブは最大出力が低下する為、発電量が大幅に低下し、パワーコンディショナーの動作点が変化する為、変換効率も悪化します。この様にIVカーブだと直ぐに不具合が確認できますが、開放電圧測定だけでは図の様に不具合が有っても電圧値には差が出ない為、大きく発電量が低下しない限りユーザーが気付く事はありません。太陽光発電システムを末永く安心して利用していく為にはストリングトレーサーでのIVカーブ特性測定が必要不可欠です。
用語説明電圧の変化:太陽電池モジュールの表面温度が上がると電圧は低下します。(真夏は電圧低下)
電流の変化:日射量が下がると電流は少なくなります。(影やセルの不良でも同じ)
短絡電流:太陽電池モジュールの負荷をショートさせた際に流れる電流値
開放電圧:太陽電池モジュールの負荷をオープンにした際の電圧値(電流は流れていません)。
最大出力電力:太陽電池モジュールの最大の出力が得られる動作点と電力
FF値:曲線因子といいIVカーブにより、電流、電圧特性の良さを表します。標準値は0.7程度です。
IVカーブ特性測定と不具合原因
IVカーブ特性測定により系統(ストリング)の不具合原因が特定できます。
【太陽パネルの等価回路】
※解説
太陽光パネルは下図の通り、複数のセルの接合部等により、直列抵抗(Rs)と並列抵抗(Rsh)が存在します。光が当たりセルが発電を始めると、何らかの原因で、その抵抗値が増したり、減ったりする事で下図の通り、IVカーブ特性が変化します。
しかし発電が完全にゼロになる事は無く、不具合の発見は難しいのが現状です。
1.赤と緑のストリングでは一部のパネルで並列抵抗の減少と直列抵抗が増大
2.黄色のストリングは並列抵抗が減少
3.青のパネルは急激に並列抵抗が減少
上図の様に太陽光発電システムはIVカーブ特性を測定しないと発見出来ない不具合が存在しています。
ストリングトレーサー(IVカーブ特性測定用)
太陽電池モジュールが設置されている現場で系統(ストリング)ごとに性能診断が可能。測定した電流値と電圧値により、IVカーブ、PVカーブ、基準値カーブ、FF値などが表示出来ます。
1.ストリングトレーサーは系統ごとに流れる電流と電圧を測定。
2.日射計と温度センサーは測定時の条件(日射量、温度)をスペック(カタログ値)と比較する際に使用。


豆知識
IVカーブ特性測定は、工場出荷時には太陽電池モジュール単品で行われています。しかし今までは設置した現場で使われる事は殆ど無く、テスターで開放電圧のみを測定していました。しかし正確な性能診断には現場でもIVカーブ特性測定が必須となり、ストリングトレーサーが開発されました。
太陽電池モジュールの特性と開放電圧
太陽電池モジュールが発電する電力は乾電池と同じ直流電力です。家庭で使う電力にする為に複数枚を直列接続して、パワーコンディショナーに送って交流電力に変換しています。複数枚にまとめた状態を系統(ストリング)といい、系統の中の1枚だけでも不良になると系統全体の発電量が影響を受けます。影の影響やホットスポットの発生、半田不良などがあると電流が流れにくくなり、系統の発電量がダウンします。この点が太陽電池モジュールの特性で、不具合が有っても太陽電池モジュールが接続されてさえいれば電圧は発生しますので、開放電圧にはその差が出ません。よって開放電圧はモジュールの性能をチェックしているわけではありません。(概念図の不具合のあるIVカーブ特性図の開放電圧を参照)
豆知識
開放電圧測定とは乾電池に何も繋がないで電圧を測るのと同じで、太陽電池モジュールを直列に数枚接続した状態を計る電圧の事です。1系統の電圧は200V~300V程度で、保守・点検ガイドラインでは「系統の電圧=太陽電池モジュール枚数×30V前後(1枚分)」があれば正常と判断します。開放電圧が1枚分程度低ければ不具合と判定しています。しかし実際は不具合があっても断線していなければ電圧は正常に発生するので開放電圧測定だけでは不具合の発見は不可能です。いわば開放電圧測定はモジュールが接続されているかを判断しているだけです。
保守点検に不可欠なIVカーブ特性測定
一般的な点検では太陽電池の開放電圧だけを測定しますが、電流を流していないので不具合が有っても電圧は発生します。よって開放電圧測定でわかる事は太陽電池が接続されている事だけで正常かどうかは分かりません。しかしIVカーブ特性測定を行うと、モジュールの性能を判断する重要なデーターを得る事が出来ます。発電量は、日射量、温度、パネルの角度、設置の方角などで常に変化します。つまり、発電が少ないのが、太陽電池モジュールの不具合なのかどうかをはっきりさせるためにはストリングトレーサーでの測定が不可欠です。測定で得られるデーターは開放電圧、短絡電流値を含めた以下の項目です。
※IVカーブ特性:電流値と電圧値をグラフ表示し性能診断(綺麗な放物線が正常)
※PVカーブ特性:電力値と電圧値をグラフ表示し性能診断(綺麗な山型のカーブが正常)
※FF値:曲線因子といい発電特性の良さを確認(0.7程度が標準)
下図の最大出力(理論値)に対する測定時の最大出力電力(Pm)の比率
※最大電力量比率:測定した4系統の電力量比較(理想は100%)


豆知識
IVカーブ特性測定器はカーブトレーサと呼ばれ、国内外のメーカー数社が発売していますが、テスター等に比べ、20万円~100万円とまだまだ高価な為、なかなか普及が進んでいません。よって太陽光発電メンテナンス業者でも所有している所は少ないのです。
太陽電池モジュールの定格出力を判断する「STC変換」
ストリングトレーサーは太陽光発電メーカーが発表している性能通り発電しているかどうかを、実際に稼動しているシステムで測定できるように開発された機器です。この機器は、発電の実測値を、そのときの太陽光の強さ(日射計)と太陽電池モジュールの温度(温度計)を取り込み、補正してメーカーが発表している性能値と比較します。その事をSTC変換といい、測定時の環境状態に左右されることなく太陽電池モジュールの発電性能を測定することができます。

豆知識
太陽電池モジュールの定格最大出力は日射量1,000W/㎡太陽電池モジュールの温度25℃で計測しています。測定時の日射量と温度を基準値に比較して測定値を変換する事を「STC変換」と言います。このSTC変換で太陽電池モジュールを初期性能と比べる事が出来ます。よってメーカーの太陽電池モジュール出力保証期間内の(15年~25年)性能値を確認するにはこの専用測定機器が不可欠です。

IVカーブ特性測定作業
IVカーブ特性測定作業は接続箱にて行ないます。接続箱4系統の作業時間は30分~1時間程度です。測定結果はパソコンにデーターを取込み専用ソフトで解析後に報告書に添付します。
保守・点検時のIVカーブ特性測定の必要性
これまでの保守点検では、太陽電池モジュールの発電不良を発見できないことがはっきりしているため、 太陽光発電協会(JPEA)が発表している「住宅用太陽光発システム 電保守・点検ガイドライン」でも、通常の保守点検において開放電圧測定に加えて、I-Vカーブ測定検査を行うように推奨されています。 (実際は業者の認知不足と機器が高価な為ほとんど行われていません)

IVカーブ特性診断で不具合を発見した際はセルラインチェックやグラフィック検査で不具合箇所の特定診断を行います。
実際のIVカーブ特性測定事例
正常な太陽電池モジュールは4系統のカーブ特性が揃っていますが、不具合の場合はカーブが大きく乱れています。しかし開放電圧は、正常時と殆ど差が出ません。よって開放電圧測定だけでは太陽電池モジュールの性能診断が出来ません。


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価格と作業内容

作業内容 |
システム稼動・目視点検 IVカーブ特性測定 ストリング電圧/電流測定 開放電圧測定 太陽電池モジュールの発電性能診断 点検報告書作成 |
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